【書評】一般意志2.0 - 民主主義を更新する夢
Posted by Miyachoo
要約
オタク文化研究でも有名な東浩紀さんの単著です。キーワードは次の2つ。
- 「一般意志」
- 「データベース」
「一般意志」とは18世紀にルソーが提唱した概念で、「個人の意思の集合体」のことです。ルソーによれば、これが政治に反映されると国民はハッピーになれます。ただし現実的には難しい。
そこで東さんは、「データベース」による「一般意志」の政治への反映を主張します。
データによる政治
ここで勘違いしやすいのは、「一般意志」はコミュニケーションでは導けない(=世論ではない)ということです。
この辺りは難解なので専門書に譲りますが、ルソーは「一般意志」は数学的に導けるものだと言います。決して民主主義の議論によるものではないんですね。
そして数学的に「一般意志」を導くものが「データベース」です。東さんの「データベース」は一般的なデータベースよりも拡張された概念で、様々な媒体に記録された人々の行動履歴(スマホ位置情報やETCの記録からネットのつぶやきまで)を指します。
この「データベース」を分析して政策に反映しましょう、ということです。これがルソーからバージョンアップした「一般意志2.0」です。
一般意志2.0は実現できるのか?
このあたりからは自分の感想です。
この本のアイデアはAIやビックデータと切っても切り離せませんよね。「データベース」は膨大なのでうまく要約する技術が必要です。
現在、世界で一番ビックデータを持って活用している国は中国でしょう。
中国の強みは、個人情報保護のユルさと参入規制による情報インフラ・サービスの国内シェアの高さ(アリババ、ファーウェイ、バイドゥ、テンセントなど)です。なので中国は自国内に個人データを蓄積し、政府に集めることができます。
ただそのデータは政策に生かされているのでしょうか?
少なくとも2015年時点では中国政府のビックデータの活用は難しいようです。
一般意志2.0の実現のためには、社会問題や都市計画、外交などその他の政策に結びつく研究への投資が必要ですね。
プラス、個人的に思うのは、ネットの情報を使うのはかなり大変ではないでしょうか?
仮に政治に使われることになれば、結果を操作しようとして意図的な情報が溢れることになりますが、どうやってスクリーニングするのでしょうか。
(なんだかアフィリエイターと検索エンジンのイタチごっこに似ていますね)